地図

 

七 論語事始め

あくる日、百合は初めての雪斎先生の講義に出かけた。百合と同い年ぐらいの少年二人と一緒だった。いざ始めてみると、雪斎先生の話はとても分かりやすく、また論語の内容に沿った面白い話なども交えて具体的な説明も丁寧にして下さるので、とても楽しかった。

一刻の後、学問所を辞去すると百合は真っ直ぐ家に帰り、綾菜の寝ている離れの部屋の廊下から声をかけた。

「姉上、いま雪斎先生の所から、帰ってまいりました」

「お帰りなさい、百合、初めての学問所はいかがでした」

「はい、とても面白かったです。今日は論語の最初の所を習ったのですが、先生が分かりやすく説明して下さいましたし、いろいろなお話も聞かせて下さいました」

「まあ、そう。羨ましいこと。もし暇があるなら、少しその面白い話など聞かせてもらえないかしら。こうして寝てばかりいると、とても退屈でたまりません。学問とはどのようなことを習うのか知りたいわ」

そこで百合はその日習った論語の一節から始めて、とうとうその日に習った講義の内容を残らず綾菜に話した。うろ覚えだとちゃんと話せないので、一生懸命思い出し、きちんと分かりやすく話すよう努めた。雪斎先生のして下さったとても面白い話のところでは、久しぶりに綾菜も笑顔を見せ、一度など何日ぶりかで笑い声をあげた。

「まあ百合、学問とは本当に面白いものなのですね。これからも何か新しい面白いことを習ったら、また聞かせに来て下さいね」

「勿論です。姉上。是非そうします。こうしてもう一度思い出してお話しすると、とても良いおさらいになりますし、私も姉上とお話しできて嬉しいです」

「ありがとう。さあもうあちらへいらっしゃい。お腹がすいたでしょう。もうお昼を過ぎていますよ」

「はい、ではまた来ます」