自分の価値観を優先する
一般に、マーケティングというと「市場の動向に合わせる」ようなイメージですが、小さな会社にはそういった手法はそれほど重要ではありません。逆に、それらを重要視すると「右に倣え」の業界の底辺にただしがみつくだけで、不安をいつも抱えて数字に追い回される経営になります。
以前、昔勤めていた会社のシンガポール支社の同僚とホテルのバーで語り明かしたときの話ですが、自分たちが担当していた企業のいまを同僚が話してくれました。大きく成長している会社、存在しなくなった会社、経営権を奪われた会社などの話です。
それらを聞きながら、当時の経営者とのやり取りを思い出すと一つの結論に達することができます。ある意味の「惹き寄せるチカラ」を持っている経営者や人間力の高い経営者しか生き残っていないのです。
自慢話をしない、人の悪口を言わない、約束を守る、時間を大切にするなどの人格の優れた経営者でした。そのなかで、特に「人の話をよく聞く」という性質の持ち主がほとんどの場合に成長を重ねていました。
周囲と正しく関係を持ち自己の価値観で生き、他人の価値観を尊重する経営。それこそが正道でしょう。
そして、そこから生まれるマーケティングは、「最近Instagramが人気でビジネスに役立つそうだ。どうせ無料だから絶対やるべきだ」なんて考え方ではSNSを活用しません。
自己の価値観を表現するSNSでなければ、時間の無駄になります。そして何より、自分の価値観に近い人々を知ることもできないのです。
自分の価値観が優先できない人は、「自分がない」、「他人の人生を生きる」ような生き方です。マーケティングに重要なのは、経営と同じで自己の決断を信じ前に向かうことです。
「必要だから人は物を買うのではなく、欲しいから買う!」という方向性に顧客を導かないと物は売れにくいのです。
ただし、自分の価値観を尊重しながら他人の価値観に敬意を表することも必要で、「新商品です」というより「人気商品です」といったほうが売れるように、相手を気遣うことも必要です。
一方で、顧客はそれほど自己の固有の価値観を持っていないことも知ることができるでしょう。すべての人が自己の価値観を優先して商品を購入するのではありません。
あるいは、「お金」という価値観で商品購入を選択するタイプの人も大勢います。
よく、物販のお店でポイントカードを勧められます。しかし、行く店、行く店でポイントカードをつくっていたら財布が膨らみます。スマホアプリならまだいいのですが、紙のカードではありがたくありません。それでもポイントカードを集める主婦などは、少なくないでしょう。その人たちは、「金銭的に得をする」という価値観があるのです。
そんな人たちを「小さな会社」では、できるだけ友だちに選んではいけません。
「小さな会社」が友だちにすると苦戦するタイプです。