「あなたがいるから私たちがいる」という概念

「あなたがいるから私たちがいる」

この概念は、私が経営する長野県松本市の株式会社エイ・ティ・エフの企業テーマです。私たちは社会に生かされていることを自覚して、社会の一員として社会に貢献することを目指します。

この概念は、『コトラーのマーケティング3.0』(朝日新聞出版)のなかで説明されていた「人間らしい企業の価値中心の時代のマーケティング」によるものです。

いまの時代は「優しすぎる時代」と私は感じています。それを嘆いているのでも「昔はよかったな〜」と思っているのでもありません。ただ、社会全般が優しすぎで「大丈夫、日本人?」とも感じます。

私が小学生の頃は、よく水の入ったバケツを持たされ廊下に立たされました。もちろん、原因は私の愚行です。それで私は廊下に立たされました。いま、教師がそんなことをしたら、悪いことをした生徒の原因は排除して、児童を廊下に立たせたという事実だけを大きな問題とします。

レジ袋の有料化も同様です。私が朝拾うゴミでスーパーのレジ袋などほとんどありませんでした。コンビニのレジ袋がときどき食べ残しを入れて捨てある程度です。

本当にスーパーのレジ袋を有料にしたことでビニールゴミがなくなったのでしょうか? それよりほかにやることはあるのではないでしょうか?

それでもユーザーはそれに順応します。肉や魚などのパッケージについては誰も何も言いません。

つまり、ここでお伝えしたいのは、現在は「良い人」「良い企業」を表現しないとマーケティングが機能しないということです。

世界は一つで、平等で、お互いを気遣いながら生きる。人間は一人では生きていけず、社会は分業制のうえで成立している。アドラー心理学流に言えば、共同体感覚が必要だということです。

「社会があるから私がいて、そして我が社がある」という人間らしい企業経営とマーケティングが必要な時代なのです。競争など必要なく、お互いが社会のために企業という組織を形成しているという考え方です。ある意味で崇高な考え方です。

ビジネスで重要なのは数字やデータではなく、昔もいまも人間そのものです。であるならば、どんなに環境が変化しても、経営者がやらなければならないことはそんなに大きく変わりません。

「原理原則」を守ることこそが、激しい変化に対応する術ではないでしょうか。それは夏は暑く冬は寒くなるという環境の変化が起きようとも、井戸水の温度は変わらず18度だということと同じです。

マーケティングは「人間関係」にフォーカスするべきで、そこに人の心や気持ちという原則があります。