実は大事な四方山話
タクシーは、さまざまな方がご利用になられる。
午前中の通勤ピークを過ぎ、少しするとご婦人方のお客様が増える時間。お送り先が病院だったり、ホテルだったり、デパートやスーパーにも行かれる。特に70、80代くらいのお客様には、いつも以上に丁寧な対応を心掛けている。
ある日……。
「あー、良かったわ。タクシー捕まって……。最近なかなか捕まらないのよ〜」
とお客様が乗り込んでこられた。お歳は70過ぎくらいだろう。お召し物のコートが凄くお洒落。
「お待たせ致しました。どちらまで、お送り致しますか?」
「横浜駅西口のデパートまでお願い」
「かしこまりました。○○屋デパートですね。このまま真っ直ぐ行って、東神奈川駅手前を、右に曲がって行くルートでよろしいですか?」
「そうそう。お願いね」
「かしこまりました。ご乗車、ありがとうございます。私、◯◯タクシーの……」
と自己紹介をした。
(この流れは弊社の決まりである)
しばらくすると……。
「もー、買い物やら 忙しくてね。年末に息子たちが来るのよ。あ、私息子が3人いてね、お嫁さんたちと孫たちで大変なのよ」
「それは、大変ですねー。でも賑やかですし、良いじゃないですか!」
「息子たちは来れば、『あれ食べたい、これ作って』って言いたい放題!」
「あら、素敵! お客様、お幸せですね」
「そうかしら……」
「そうですよ。そもそも、お嫁様たちやお孫様たちが、嫌がらずに来てくださるんですもの……お幸せですよ。息子様たちだって、お母様の手料理が食べたいから、甘えてワガママをおっしゃるんでしょうし……」
「そうかもしれないわね。確かに、お嫁さんが嫌がったら来てくれないわね………でもね、聞いてくれる?」
とお嫁さんの愚痴が出る。