財布がない!
昨夜の出来事。23時すぎ。お客様4名様をお乗せした。40代くらいの男性2名、20代後半くらいの女性2名。
会社の仲間? 同僚みたいな感じでした。どうやらお酒を召していらっしゃるご様子。
距離はワンメーター、740円。(2019年12月現在の初乗り運賃)
支払いになると、助手席の男性を残し、後部座席のお客様は先に下車され、どちらかに行かれてしまわれる。次の店に行ってしまわれたのだろう。
「カード使えますか?」
「はい、ご利用いただけますよ」
ガサゴソ、ガサゴソ……。ガサゴソ、ガサゴソ……。鞄の中を探されている。
「ない! ないなぁ。財布が見当たらない」
ガサゴソ、ガサゴソ……。
「さっきの店に忘れたかな?」
慌て始める男性。私も一緒に鞄の中を覗き込むと、確かになく、スーツのポケットにもなさそうだ。お連れ様の姿はなし。(困ったな。無賃乗車で警察呼ぶのもなぁ……)
10数分、過ぎた頃。私が言った。
「お客様、今日のこちらの料金は私が立て替えますので結構です。後から送ってくださいな。それよりも、お連れ様も心配されますし、何よりお財布がないと困りますよね。早く前のお店にお電話されて、ご確認くださいな」
と私の名刺をお渡しする。慌てながらも礼を言い、深々と頭を下げて去っていく、男性のお客様。
きっと、この対応はタクシー運転手として間違い。いけないのはわかっている。本来ならお連れ様に電話して戻ってきてもらい、代金をいただくか、御名刺をいただいて、携帯電話の番号も聞くべきだと思う。もしくは、警察を呼ぶ。
日中、嫌なことがあり、ずっと凹んでいた私は、ややこしいことになるのが嫌だった。助手席の男性を残し、サッサといなくなってしまわれたお連れ様の冷たさにも嫌な感じを受けた。
ダメだとは思ったが、私は早く一人になりたかった。何より、数百円で警察呼ぶ?
この40代くらいのお客様は、きっと誰だかの旦那様であろう。お連れ様の部下(?)や同僚(?)たちの前で、大の大人が数百円を払えないようでは恥もかくだろう。
それに私だったら財布がなかったら、かなり慌てる。私は返ってはこない料金だと思いながら、その場を去った。
お客様のお財布、見つかりますように……。