女性ドライバーの試練

師走の夜になると、この仕事は段々忙しくなっていきます。

ボーナスが支給され、忘年会シーズンでもありますからね。

皆さん、お酒を召していらして楽しそう。

そんな街中の光景を見ているのが好きです。

人の笑顔は最強ですね。

さて、私がタクシードライバーになってから何度となく経験した嫌なことを話します。

駅のタクシー乗り場。

まったくお客様がいらっしゃらないときと、長蛇の列になっているときがありますね。

お客様の数は、曜日や時間帯によっても違います。

私も、ある駅のタクシー乗り場に付けてお客様をお乗せしています。

嫌なのは深夜、長蛇の列のとき。

お客様がたくさんお待ちですから、タクシードライバーはワクワクすると思います。

私はその反面、ドキドキします。

大抵、深夜は男性のお客様が多い。

柵で仕切られた乗り場は、長蛇の列。

ということはタクシーが出払っている。

そんなときにゆっくりと乗り場に侵入し、先頭のお客様を確認します。


並んでいるお客様たちは、「やっと一台来たよ…」的な視線でドライバーの私を見ます。

そして、ザワッとなるんです。

「女だよ……」

先日は、一番先頭のお客様がお乗りになるときにドアを開け、

「こんばんは〜。どうぞご乗車くださいませ」

とお声を掛けた。

すると2番目、3番目にお待ちの男性の方たちが、

「女だぜ。女の運転手!」

と大きな声で言う。

「うわぁ〜! 俺、女の運転手がいい!!️ 次がジジィだったらどーしよっ!!」

周りのお客様も、どれどれと、覗き込んでくる。

恥ずかしい……。

まるで、オリの中のゴリラ見物だ。

私が美人ならまだしも……。

女性のドライバーを物珍しそうに見るのはホントに嫌。

お酒を召していらっしゃるのはわかるけど……。

確かに深夜に女性ドライバーは珍しいかもしれません。

でも嫌なんです。あの雰囲気。

そして、そのときにご乗車されたお客様が男性だと、なぜか(?)嬉しそうに乗り込んでこられる。

騒がれて嫌じゃないのかな?

嫌なのに、ドキドキするのに……。

街灯の明かりに、吸い寄せられる虫のように、今夜もタクシー乗り場に吸い寄せられる私です……。