方針転換に順応する

時代は、バブル真っ盛りの頃です。

上司に呼ばれて、デスクまで行くと、

「おい。どうして今月のこの台数、こんなに少ないんだ?」

「はい。先月出た方針の通り、今月は台数を追うよりも、付加価値の高い製品にシフトして、単価を上げてみました。金額ベースでは、かなりいい線いったと思います」

「それは先月の話で、今月も台数なんだよ。台数落としちゃダメだよ、ダメ! 来月は絶対に台数やれよ、分かったな」

会社の方針に従って、簡単ではない施策にチャレンジし、それなりの成果を出したのですから、おほめの言葉でももらえるのではないかと、内心期待していました。

ところが、結果は逆で、思いっきり怒られてしまいます。

「では、あの単価を上げるという方針は、どうなったんですか?」

納得がいかなかったので聞き返すと、

「そんなものはもうない。台数シェアの追求あるのみだ」

回答は至って簡単、今までと何も変わらない、安売りの推奨です。

正直、その方針に嫌気がさしていた頃だったので、「付加価値へのシフト」はとても魅力的に感じていました。

「よし、一丁やってやるか!」

そう意気込んでいた矢先に、出鼻をくじかれた格好で、その瞬間は、腹が立ったのを覚えています。しかし、会社の方針は方針です。何よりも、上司からの指示です。

「はい、分かりました。台数ですね、台数をやればいいんですね」

冷静に考えれば、あれほど台数シェアにこだわっていた会社が、そう簡単に方針転換できるはずもなく、たとえしたとしても、成功する保証はありませんでした。

従って、当時の「初志貫徹主義」は、理にかなっていたのかもしれません。会社の方針は、意に反して、突然変更になることがあります。

内容は、全社的な経営判断に基づく重要事項から、極めてローカルなルール変更に至るまで、千差万別です。しかし、その方針に則って成果を出すことで、給料をもらっているのも事実です。

そう考えると、「方針転換」にも、ついていかざるを得ないことになります。

朝令暮改は当たり前

次に、「方針転換のレベル」を軽く超えた事例を紹介しましょう。