夜の森
「私は十四歳です。近衛騎士には去年入団しました。」
ラウルはよどみなく、しっかりした口調で答えた。
「私は十六歳になったところです。あまり年の差はありませんね。その若さでアルメニス国の近衛なんて、とても優秀でいらっしゃるのね。」
ディアナベスの心からの賞賛の笑みを見て、ラウルは誇らしさに顔が熱くなった。
「まだ近衛騎士としての修業の途中なのです。特にその……ご婦人への礼儀作法については、まだ。」
ラウルはディアナベスから目をそらし、炎を見つめるふりをした。ディアナベスがじっとラウルを見つめているのを感じていた。ラウルはもう一度しっかりディアナベスの方に向き直った。
「ですから、数々の失礼をお許しいただければと思います。」
ディアナべスは、少年の真面目さに、屈託なく笑いだした。ラウルは戸惑い、また顔が熱くなるのを感じた。
「あなたは一度も失礼だったことなんてないわ。むしろその逆よ。」
ラウルがまだ戸惑った様子でディアナベスを見つめていた。彼女は、にっこり笑った。
「ねえ、ラウル。私たち友だちにならない?」
「友だち?」
「そうよ。せめてこの森を抜けるまでの間。騎士と王女ではなく、友だち。礼儀もなし、身分もなし。面倒な敬語もなし。私の国では身分の差があまりないの。私は洗濯屋の娘さんともお友だちよ。もしかしたらあなたのアルメニス国のような大国では考えられないかもしれないけど。」
ディアナベスはすっかり警戒を解いた気品のある町娘のように見えた。
「だいたい敬語は変化形が多すぎて、話すのに疲れるわ。私たちただでさえ疲れているのに、なるべく体力を消耗しないようにしなきゃ。」
彼女が町娘のように話し出すのにラウルが驚いていると、ディアナベスは悪戯っぽくラウルを見た。
「私はご婦人じゃないわ。ただのディアナベス。友だちになるにはひとりではできないのよ。相手もそう思ってくれないとね。いくら騎士でも年の近い女の子とお話ししたことはあるでしょ?」