脈拍
「真実をよ。」
ラウルは眉をひそめて、ベスに向き直った。
「ラルス・ジーモンの真実か?」
彼女はうなずいた。ラウルはベスから目をそらし、麻袋に木の実を詰め始めた。
「ラルス・ジーモンの肖像画についてなんか考えたことないよ。そんな必要もない。僕の考えることでもない。」
「そうかしら? よく考えることは大事だと思うわ。噂ではなく、真実を知って行動するというのは大切なことよ。」
ベスは思い巡らすように言った。ラウルは黙って木の実を摘み続けた。二人はビクタスの方へ歩いた。
「そろそろ出発しよう。大丈夫?」
「私は平気よ。一番疲れているのはビクタスじゃない?」
「あいつはすごくタフなんだ。僕よりずっと。騎士団の中でも特別体力がある。」
ベスは日差しの中のラウルの端正な横顔をしばらく見つめた。明るい光の中で見るラウルは、一段と輝かしく見えた。琥珀色の瞳に森の木々が映っている。
「近衛って、みんなそんなに綺麗なの?」
ベスは思ったことを、そのまま口に出してしまってから、はっとした。ベスは歩きながら居心地が悪くなり、赤くなってうつむいた。