アドラー心理学の中心的な概念
アドラー心理学の理解をさらに深めるために、重要な概念をキーワードとして挙げて説明しましょう。
(1)劣等感と優越性の追求劣等感をバネにして飛躍する
アドラー心理学では、今よりも優れた存在でいたいという人間の普遍的な欲求を「優越性の追求」と呼びます。
アドラーは、
「すべての人を動機づけ、われわれがわれわれの文化へなすあらゆる貢献の源泉は、優越性の追求である。人間の生活の全体は、この活動の太い線に沿って、即ち、下から上、マイナスからプラス、敗北から勝利へと進行する。」(『人生の意味の心理学』(上))
と述べています。この引用文の下、マイナス、敗北で感じるものが「劣等感」で、優越性の追求と対を成すものです。
人間は、始点(劣等感)と終点(優越性)の一本の線を上昇する(追求する)活動をします。
このように、劣等感を補うことを「補償」と呼びます。さらに、補償が余ってむしろ、その面が優位に転じることを「過補償」と呼びます。
アドラーは、人間である以上、誰しも劣等感を持つものであり、劣等感を駄目なものと否定的な意味合いでは使用していません。
むしろ、人類や人間の進歩の原動力、努力や成長への刺激になるものとして積極的な意味合いで捉えています。
劣等感の対象は、他者との比較ではなく自分との比較です。つまり、理想の自分と現実の自分との比較から生じるものです。したがって、優越性の追求も他者との競争ではなく、自分との競争になります。
一方、生活に支障をきたすような身体的ハンディキャップを「器官劣等性」と呼びます。
「劣等性」とは、生まれた時からの特定の器官の弱さで、生活上不利に機能する性質、特徴です。