人間は、五つの課題に取り組む

アドラー心理学の理解をさらに深めるために、重要な概念をキーワードとして挙げて説明しましょう。

人間は、人生の中で様々な課題に直面しますが、アドラーは、ライフタスクと呼んで、次の三つに分類しています(図11)。

図1

(1)仕事のタスク

どのような仕事に就いて、仲間と協力しどのように共同体に貢献していくかが、仕事のタスクです。ここで言う仕事は、お金を稼ぐビジネスの仕事だけでなく、専業主婦の家事、育児や介護、学生の学業なども含みます。

(2)交友のタスク

友人たちと良好な人間関係を築き、共同体の中に居場所を見つけることができるかが、交友のタスクです。職場の上司、部下、同僚は、ここに含まれます。仲間や友情がキーワードになります。

(3)愛のタスク

人類の存続は、私たちの愛の生活に依拠しています。カップルを基本に親子を含めた家族関係のあり方が、愛のタスクです。

あらゆる悩みは人間関係に行き着く

三つの課題は、完全に独立して起きるわけではなく、関連し合い、場合によっては重なり合っているのが現実です。

アドラーは、「われわれには、対人関係の問題以外の問題はないように見える。」(『人生の意味の心理学』(下))と述べています。言い換えれば「人生の悩みは、すべて人間関係にある」ということです。

仕事、交友、愛のタスクの順番に人間関係の深みが増してきます。この視点で見ると、愛のタスクは、運命共同体的な人間関係なので一番難しいタスクと言えます。

現代アドラー心理学では、時代の要請を受けて次の二つを追加しています。

(4)セルフ(自己)のタスク

自分とどう付き合うか、自分をどう受け入れるかが、自己のタスクです。健康、趣味、遊び、リラクゼーションなどが含まれます。

(5)スピリチュアルのタスク

この世界に生きる以上、自分を包み込む大きな存在(神や宇宙や自然など)との向き合い方に関するのが、スピリチュアルのタスクです。

その人特有の色眼鏡をかけて行動する

ライフスタイルは、その人独自の個性的な人生に向き合う基本的な態度、行動様式です。人の思考、感情、行動のスタイルの総称とも言えます。

思考は、マインドセット(物事の見方や考え方)とも言えます。ライフスタイルは、独自で個性的ですので人それぞれ違います。