早期回想でライフスタイルを読み解く
アドラーは、ライフスタイルを見極める判断材料として、アドラー独自の方法である早期回想(最も古い記憶)を提唱しています。
アドラーは、「早期回想をたずねないで人について調べることはないだろう。」(『人生の意味の心理学』(上))と言うほどに、その人を知るうえで早期回想を重要視しています。
アドラーは、早期回想が重要であるという理由は、第一に「人が自分自身と状況について行う根本的な評価を要約している。(中略)第二に、それは、主観的な出発点である。」(同書)と述べています。
早期回想の記憶自体が、正しいか間違っているかということを吟味するのではありません。なぜ、その人がその記憶を思い出したのかという所にメスを入れることで、その人のライフスタイルを導き出すことができます。
他人の人生を生きてはいけない
承認欲求とは、他者から認められたいという欲求です。他者の評価で自分の存在価値を認めることです。
優越コンプレックスの場合は、他者より優れているように見せかけるという不健全な目標に向かうので、常に他者の評価を気にします。このことは、他者から良く評価されたいという承認欲求につながります。アドラーは、この承認欲求を否定します。ほめることも承認欲求を満たすものに含まれます。
承認欲求は、タテの関係を生む
アドラーが承認欲求を必要としない理由は、他者に依存する生き方になるからです。自分は、他者の期待を満たすために生きているのではありません。それでは、他者の人生を生きることになります。
他者の評価に依存すると人間関係は、タテの関係になります。ほめるというのは、能力のある人が能力のない人に下す評価という序列関係(上下関係)が生じます。ほめることで、相手を支配し操作することになります。
ほめられて育った人は、ほめられることを期待するようになり、自分をほめる人がいなければ、適切な行動をしなくなります。
このように、他者に依存する人生は、不自由な生き方であり、生きづらさを感じるだけです。この生き方から脱却するためには、課題の分離(後述)が必要になります。
他人の課題を背負わないと楽になる
課題の分離とは、自分の課題か他者の課題かをはっきり分けるということです(図1)。
誰の課題なのかは、課題の結末が、誰に降りかかり誰が困るのか、その責任を誰が引き受けなければならないのかを考えることで明らかになります。
子供が、夏休みに宿題をしないで遊んでいるとしましょう。母親は、見るに見かねて勉強しなさいと怒ります。この例で言えば、先生に叱られるのは、子供です。学業が遅れて困るのは、子供です。当然その責任は、子供にあります。
したがって、この課題は、子供の課題であり親の課題でありません。親が子供の課題に介入して怒ることは、アドラー心理学では、不適切な行動になります。