働くことの意味と目的

働く目的は、自己成長とともに変化する

一方、一人十色という捉え方もできます。一人十色とは、三人の石切職人の喩え話を、同じDさん一人の石切職人の喩え話だとすることです。Dさんの欲求は、下から上へと段階的に欲求が高まっていくことで、働く目的が変わります。

新入社員の時、中堅で管理職になった時、あと数年で定年になる時に、働く目的を聞けば、それぞれ違うことは至って当然のことです。この過程が、自己成長、自己変容の過程とも言えます。(図1)

(図1)

働く目的を問いかけ続けるとスピリチュアルタスクに行き着く

一人の石切職人の喩え話で言えば、目的の手段化の連続的な上位化です。手段の目的化ではなく、目的の手段化です。ある目的を起点にして、その目的を手段化して「何のために何のために」と問い続けていくと目的と手段が連鎖をします。

しかし、永遠に続くわけではありません。必ずどこかで帰結し統合します。行き着いたところは、幸福という終着駅になるのではないでしょうか。アリストテレスは、幸福という到達点を「最高善」と呼んでいます。

目的の手段化をわかりやすいように、一人の石切職人の言葉を少しアレンジして説明しましょう。

「お金を稼ぐために(目的)石を切っている(手段)」からスタートします。次は、お金を稼ぐためという目的を手段化すると「日本一の石切職人になるために(目的)お金を稼いでいる(手段)」になります。さらに、日本一の石切職人になるという目的を手段化すると「私は、世の中で一番すばらしい大教会を作って、人々の安らぎの場となることを夢見るために(目的)日本一の石切職人になる(手段)」に至ります。(図2)

(図2)

さらに、目的の手段化をしてアリストテレスの言う最高善に迫るとしたら、Dさんはなんと答えるでしょうか。