人間関係のトラブルの多くは、課題の分離ができておらず、勝手に相手の課題に土足で踏み込むこと(介入すること)から起こります。
人間関係を「自分と他者は対等である」と見ると、ヨコの関係になります。
ヨコの関係では、他者の課題に介入するのではなく、他者が、自らの課題として立ち向かえるように援助します。これをアドラー心理学では、ヨコの関係に基づく援助のことを勇気づけ(後述)と呼びます。
課題の分離を入り口としても、自分の課題は、他者の協力を仰がなければ解決できず出口が見えないのであれば、その課題は「共同の課題」として挙げて、お互いに向き合って課題解決をします。
承認欲求と課題の分離を関連づけると図2のようになります。
困難や逆境を克服する勇気をもとう!
アドラー心理学は、「勇気づけの心理学」と言われるように、勇気づけは、共同体感覚(後述)と同様に中心的な概念です。アドラー心理学を車に喩えるならば、勇気づけと共同体感覚は車の両輪です。
ライフタスクに取り組むときに、踏み留まっている人や挫折している人(勇気をくじかれた人)に課題に立ち向かう力と課題を克服する力を与えることが、勇気づけです。つまり、勇気づけとは、「困難に立ち向かっていけるという自信を持つように援助すること」(『アドラーを読む』)です。
勇気づけは、課題の分離ができている「ヨコの関係」ができていることが前提です。「ヨコの関係」では、人間関係を対等の立場で捉えていますので、評価を下さないで、素直に感謝や喜びの言葉(ありがとう、嬉しい、助かるなど)が出てきます。
人間は、感謝の言葉を聞くと自分は、他者に必要とされている大切な人と感じます。感謝の言葉は、他者を評価しないで自分の気持ちを伝える私(I)メッセージ(アイメッセージ)なので、勇気づけになります。
共同体感覚があると勇気づけができる
アドラーは、「私は自分に価値があると思う時にだけ、勇気を持てる。」(『勇気はいかに回復されるのか』)と述べています。自分に価値があると思える時とは、他者に貢献できている(私は役に立っている)と実感できるときで共同体感覚に満たされた時です。このように、勇気づけと共同体感覚が、相互に関連づけられます。
勇気づけは、他者だけに向けられるのではなく、自分を勇気づけるという視点も重要です。なぜなら、自分を勇気づけることができない人に、他者を勇気づけることはできないからです。