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再会の扉
私が体の異変に気づいたのは、あの夢を見てから二カ月ほど経った頃だった。
夢を見た日を覚えている理由は、前日に付き合っていた彼氏と別れたからである。日付が変わってもろくに眠れず、心身ともに最悪の状態で店を開けた結果、注文を間違え、食器を割り、水をひっくり返し、閉店まで散々な対応を重ねてしまった。
その夜は疲労と心労から九時頃には眠ってしまい、明け方に見て目を覚ましたのが、あの夢なのだ。父は自宅の一角に、マートルという名の小さな喫茶店を開いていた。
幼い頃母を病気で亡くしていた私は、地元の大学に通いながら店の仕事を手伝っていた。裕福ではない家計で一人娘を進学させてくれた恩義として、一人で店を営む父を助けるのは当然のことだと思っていた。
そして二回生になった六月三日。いつもの時間に降りてこない父を不思議に思い、二階の寝室を覗きにいくと、ベッドの中で眠るように息を引き取っていたのである。
死因は急性の心臓病。夜間狭心症、別名サイレントキラーは明け方に発症例が多く、そのまま死に至る確率が高いらしい。昼間は全く症状が出ないのが特徴だとか。