ベトナムの桃源郷(シャングリラ)にて
あれからかなりの時間が経った今でも、おにぎりを食べるとその桃源郷の村の佇まいが脳裏に浮かんでくることがある。
勿論、おにぎりの味は味覚として残っていない。しかし、おにぎりが大変美味しかったという思い出は記憶の底にしっかりと留まっている。
後ろ髪を引かれる思いでその村を離れ、その日の内にハノイに戻った。ハノイでは夕食までに若干の時間があったので由緒ありげなホテルのバーで一休みした。
現在の「ソフィテル・ホテル」である。ニューヨークのアルゴンキン・ホテルのバーを彷彿させるような雰囲気を持った小さなバーにて、昼間試したばかりの砂糖黍の焼酎を飲みながら後輩と反省会を開いた。
丁度、我々の席の隣に日本人とおぼしき中年の男とその連れ合いの西洋人がいるのに気がついた。当時のハノイで日本人の旅行者を見かけることは皆無であり、試みに声を掛けてみた。