水場のおにぎり
いわゆる団塊の世代より、ほんの少し後の世代に属する私が小学生の頃は、全国で小中学校にプールがあるのは極めて稀であったと思う。
恥ずかしながら、私は水泳をプールではなく、川でマスターしたのである。
那須にその源流を発し、太平洋に流れ落ちる那珂川は、当時は、下流の水戸市内を流れる時でも澄み切った清流であった。那珂川では毎年夏になると川開きがあり、子供たちに水練場(水場)が開放された。
当時小学校の低学年であった私は、夏の午後になると姉に手を引かれ市電に揺られて水場に泳ぎに通っていた。横泳ぎのことを「ノシ」ともいう水戸藩に古くから伝わる水府流の泳ぎを習ったのもその水場であった。
水場では、何回かの泳ぎの時間があったが、疲れた身体を日に灼いて休む時が至福の時間であった。友達と砂ダンゴを作りダンゴの潰し合いもした。
しかし、休憩時間の最大の楽しみといえば何といっても母が作ってくれたおにぎりを頰ばることであった。母が自ら鰹節を削り、握ってくれたおかかの入った海苔が巻かれたおにぎりは、私のおにぎりの原点である。
川面に赤トンボが飛ぶ頃になると、これで夏も終わりとの寂寥感が募ってくる。そんな時に食べたおにぎりはしんみりとした味がした。
おにぎりには楽しい思い出もあるが、何故かしみじみとした気持ちにさせられる思い出が多い様な気がしてならない。
ゴルフ場のおにぎり
バンコクはバンナー・トラート路を走り、華僑崇聖大学を過ぎると、門構えが立派なゴルフ場に到着する。
なんと、そのゴルフ場には早朝、水屋にジャポニカ米のおにぎりが置かれている。
何度か食する機会があった。感想を一言で言えば簡単でしかも旨いに尽きる。しかしである。太陽の照りつけるタイのゴルフ場におにぎりは似合わない。そんな気がする。