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蜘蛛のゆめ
ちじゅは聞いているのか、いないのか…、ゆうゆうと糸をあやつっていました。
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その日の夜も、ちじゅは少年たちのゆめの中にあらわれました。
「みなさん、わたしに、なんてすてきな名まえをつけてくださったのでしょう!」
「よかった!気に入ってくれたんだね」
みんな、うれしくなりました。
「おれいに、みなさんに、お月さまのひみつをおしえましょう」
ちじゅが、言いました。
「お月さまのひみつ? まさか、月には宇宙人(うちゅうじん)のひみつきちがあるとか?」
ムッチーのことばに、ちじゅは、あたまをよこにふりました。
「みなさんは、どうしてお月さまが、太ったりやせたりするのか、知っていますか?」
「知ってるよ。本で読んだことあるもん」
すかさずヤマトが、答えました。
「地球のかげが、月にうつるからさ」
「それが、月のひみつ?」
レオが、ちょっぴりがっかりしたようにたずねました。するとちじゅは、こう言いました。
「じつはお月さまは、まん月のすがたでいるのが、いやでたまらないのです」
「えっ?どうして?」
「お月さまは、いつかこの地球が、なくなってしまうのではないかと、しんぱいしています。なにしろ地球のあっちこっちには、この星を百回もばくはつさせてしまうほどの、カクバクダンがあるのですからね」
「ええーっ!」
みんな、びっくりしてしまいました。
「百回も?」
「なんで、そんなに?」
「いみがわかんない」
「ちっとも、知らなかった…」
少年たちは、口々に言いました。
「さて、みなさん? もしも地球がなくなったら、お月さまはどうなると思いますか?」
ちじゅの八つの目が、きらりと光りました。
「ずっと、まん月のままだ…」
ヤマトが、つぶやきました。
「そうです。だからお月さまは、まん月のすがたでいるのが、いやでたまらないのです。それが、お月さまのひみつです」
※
次の日も、少年たちは、ちじゅのところにあつまりました。
「地球がなくなるなんて…」
「考えたこともなかった」
「ちじゅ、おしえてくれて、ありがとう」
「ちじゅは、ほんとにもの知りだね」