するとちじゅは、ツツーッと巣からぶらさがり、クルッとまわってみせました。まるで、ちょっぴりてれているみたいでした。
こうして少年たちは、まい日ちじゅのようすを見に行きました。ときどき、巣についたゴミを、とってあげたりもしました。しかしちじゅは、こんなしあわせな日々が、長くつづかないことを知っていました。
それは、虫の音がさわがしい、秋の夜のことでした。ちじゅがまた、みんなのゆめの中にあらわれました。
「こよいはみなさんを、夜空にごしょうたいしましょう」
いつの間にかみんなのからだが、クモのように小さくなっていました。そして、パジャマのおしりのあたりから、銀色の細い糸がのびていくではありませんか。
「わあ、しっぽがはえてきたみたい!」
ユキチが、うれしそうに言いました。
「なんだ、これ。ふわふわ、ういてるぞ?」
「おれのからだも、ういちゃいそう…」
レオとムッチーは、あわてて手をつなぎ合いました。
「ぼぼぼ、ぼくもだよ!」
ヤマトも、おしりからつまみあげられるようなかっこうで、空中にうかびあがりました。そのとき、海のほうから、風の音が近づいてきました。
ビューン、ヒュルルルル…。
「みなさん! あの風をつかまえて!」
ちじゅも、しゅるんと糸を出しました。
「さあ、出発です!」
風は、やさしくカーテンをゆらすように、みんなを夜空にまきあげました。
「うわぁぁぁぁ…」「ひゃぁぁぁぁ…」「うぉーっほっほっほっほ…」「ひゃあーっはっはっはっは…」
みんなのひめいは、すぐにわらい声にかわりました。
「うまく糸をあやつるのです!」ちじゅは、からだを左右にゆらしながら、一気にまいあがっていきました。
「よぉし! 行くぞ」
レオとヤマトが、あとにつづきます。
「まってよ、ちじゅ」
ユキチとムッチーも、せっせとひらおよぎをしながら、ちじゅのあとを追いました。空には、まん丸のお月さまと、たくさんの星がかがやいていました。
「ひゃっほーっ!」
みんな、ちじゅといっしょに、むちゅうで夜空をただよいました。
「気もちいいーっ!」
「もう、サイコーだね!」
はるか下のほうには、色とりどりの、町の光が見えました。ずいぶん高く、まいあがってきたようです。