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蜘蛛(ちじゅ)のゆめ

「おい、見てみろよ!」

はまべから少しはなれた野原で、レオは、三人のなかまを呼びとめました。

「えっ、なに?」

ユキチとヤマトとムッチーが、レオのゆびさすところに、もどってきました。

大きなクモの巣に、一ぴきのクモがいます。黄色と黒の、ジョロウグモです。

「なんだ、ただのクモじゃん…」

ユキチが言いました。

「おれ、にがて」

「ぼくも」

ムッチーとヤマトは、少しあとずさりしました。

するとレオはニヤニヤしながら、細い木のえだで、クモのおなかをそっとつついてみせました。

「こうすると、おもしろいんだぜ」

おどろいたクモは、八本の手足をのばして、巣をトランポリンのようにゆらしはじめました。

「あははは…、巣がビヨンビヨンしてる!」

ヤマトが、一番にわらい出しました。

「こいつ、ぼくたちをおどかしてるつもりなんだ」

ユキチが、ぶあついめがねをかけなおしながら、言いました。

「もっとつついたら、ふっとぶかもよ?」

からだの大きなムッチーは、みんなのうしろから、こわごわのぞいています。 

「そしたら、ふんづけて、ころしちゃえ」

レオが、ふたたび木のえだを、クモに近づけたときです。

キキーッ…。

「おまえたち、なにやってんだ?」

一台のじてん車が、みんなのうしろに止まりました。

まっ黒に日やけした、りょうしのおじさんが、ニカッとわらっています。

「なんだ? よってたかって、そんなちっこいクモを、いじめてたのか?」

たくましい海の男にそう言われると、少年たちはきゅうにはずかしくなり、みんなで下をむいてしまいました。

「さてはおまえたち、知らないんだな?」

おじさんは、うつむいているみんなのまえに、しゃがみこみました。

「知らないって、なにを?」

ユキチが、つぶやくようにたずね、ほかのみんなも、おじさんのかおを見つめました。

「クモはむかしから、人間にとってだいじなえき虫なんだぞ」

「エキチュウ?」

「そうさ。クモはとってももの知りで、人間をこまらせるがい虫を食べてくれているんだ。ハエもガもゴキブリも、ドクをもつ毛虫も、畑の野菜(やさい)を食っちまう青虫も…」