第3章 ORIONS計画

星野は伊藤から織田の脳の記憶データをコンピューターにコピーできたことを聞いて、

「伊藤さんやりましたね、長年研究してきたニューロン方式の記憶データ保存システムの完成ですね。ノーベル賞ものですね」と褒めると、

「私は名誉なんか全く興味がありませんが、神が作り上げた不可思議な世界を自分の手で見てみたいだけなんです」

「そうですね。神様はどうやってこんな不思議な世界を作ったのでしょうね」

堀内が、「最近私は不思議なことを感じるのです」と言う。

「不思議なことって何ですか」

「神様が夢の中に出てきて、お前たち早くこっちに出かけてこいって、言うんです」

「あの世に来いと言うんですか」

堀内が笑いながら、「伊藤さん違いますよ、あの世ではなく、宇宙の涯に出かけてこいと言うんです」

「宇宙の涯ですか、涯と言われても広いですから、人間の力では何ともなりませんよね」

「伊藤さん、それがそうでもないと思うんです」

「えぇ? 可能性があるんですか、科学者としてですよ」

「はい、科学者だからこそ、神に会えると思うんです」

「やるとしても最初ですからテスト飛行になるかもしれませんがね」

伊藤は科学者だからと言われて、堀内の言っていることが夢ではなく本気なのだと思った。

そこで、「どうやってですか、もう少し具体的に話してくれませんか」と疑問を投げかける。

「まずは資金ですが、金のことは織田さんに何とかしてもらい、ロケットと宇宙船のことは私が担当します。コンピューターの件は伊藤さん、いいですね。宇宙のことは星野さんに任せればOKですよね。そして、何千年も何万年も先に行くのですから、身体と生命のことはドクター本多と中本先生に任せれば何とかなると思いませんか」

「なるほど、この6人で神様に会いに行こうと言うんですか」

「お会いできるかどうかわかりませんが」と、にっこりする。

この馬鹿げたような話は、織田の耳に入り6人全員が知ることになった。

もともと研究者であった織田の好奇心を大いにくすぐった。