【小説】「宇宙に気楽に行けるエンジンを今設計しています」
U リターン
【最終回】
森 久士
いざオリオンの星へ。
ロケット開発、IT、天文学、再生医療……。
各分野の天才たちが集い、立ち上げた系外惑星への移住計画。
宇宙船ウラシマに乗り込み、AI「乙姫」とともに1万光年の旅へ。
数多の苦難を乗り越え、目的の星で彼らが見た景色とは――。
最先端技術の融合を描く、エンタメSF小説をお届けします。
地球型惑星への移住を企む「ORIONS計画」。宇宙船の開発は順調に進み、やがて旅立ちの時が来た! 本記事では、森久士氏による傑作エンタメSF小説『U リターン』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、天才六人衆とニューロコンピューター「乙姫」が往く宇宙大冒険をお届けします。
第4章 乙姫
堀内の研究が本格的に始まった。
まずは、地球と宇宙を往復できるシャトルのエンジン開発である。
織田にとっては自分の生まれ故郷でもあり、もともと気の休まる場所。そこで聞く爆音轟くエンジン音がとても気に入っていた。
堀内からエンジンの発火実験の連絡が入ると、「点火ボタンは俺に押させてくれ」と、実験場に必ず出かける熱の入れようである。
地元の人たちも、もともと織田家のことは親の代からの知り合いであり、ロケット開発というロマンチックに思える実験に興味津々であった。
村人の中には研究室に取りたてのミカンを持って差し入れに来る者がいるほどである。