第4章 乙姫

堀内の研究が本格的に始まった。

まずは、地球と宇宙を往復できるシャトルのエンジン開発である。

織田にとっては自分の生まれ故郷でもあり、もともと気の休まる場所。そこで聞く爆音轟くエンジン音がとても気に入っていた。

堀内からエンジンの発火実験の連絡が入ると、「点火ボタンは俺に押させてくれ」と、実験場に必ず出かける熱の入れようである。

地元の人たちも、もともと織田家のことは親の代からの知り合いであり、ロケット開発というロマンチックに思える実験に興味津々であった。

村人の中には研究室に取りたてのミカンを持って差し入れに来る者がいるほどである。