帰還

西暦44225年、火星天文台と木星の無人天文衛星から、

「巨大隕石発見、オリオン座方面、ヘリオポーズの境界線175億キロを越えて接近中」

未確認物体が太陽系惑星のリング内に接近中との緊急報告が入る。太陽系外から巨大な隕石が、あたかもオリオン星座のペテルギウスが弓で矢を放ったように、平面的に並んで惑星が回転している太陽系に飛来してきた。

火星から5億キロメートル離れた木星の軌道近くをかすめるように、第3宇宙速度を超える速さで接近してくる。火星天文台が、太陽光線にわずかに光る隕石を光学望遠鏡で確認、人類への危険は無いものの太陽系外からの飛来隕石は極めて稀なことである。

近づくにつれて隕石の大きさが判明してきた。形状は葉巻のように細長く、全長は4千メートルほどもある巨大物体である。万一地球に衝突すれば地球上のすべての生命が絶滅する被害が出る大きさである。

地球防衛隊は、この不可思議な隕石を太陽系に張り巡らした天文台からつぶさに観測していた。しかし不思議なことに大きさの割には質量がとても少なく、隕石の中が空洞になっているのではないかと学者らは疑問を感じ、人類が経験したことがない不思議な隕石として議論の的となっていた。万一軌道がずれて太陽系に影響が及ぶことになるなら破壊すべく準備も始められた。