母ちゃんをご紹介

家の母ちゃんは、でめんさん(農家仕事をする主婦の集団のこと)約五〇人を従えた言わば親分、毎日仕事で家にはいない。

私のような変な子ができたのも、母ちゃんのせいである。

だって、私以上に変な母ちゃんでした。何がって、私は小学校卒業するまで、寝るときはいつも母ちゃんの横、しかも母ちゃんのおっぱいを触りながらの超甘えん坊へへ、ちょっぴりこっぱずかしーなー(恥ずかしいという意味)。

寝る前に母ちゃんはいつも「茂こんな歌知ってるか」、と言いながら歌う歌が、そのときは意味不明でしたが、毎日のことなので頭が悪い茂でも、暗記してしまったのです。

では、さっそく、その一部をご紹介させていただきます。

一 一週間の歌(作詞・作曲、佐々木トシ子)

月夜の晩に 火事があり 水を汲んでた 木べいさん 金玉落として 土ろだらけ明日は日曜だ洗おかな
(意味不明・そこがまたいいのです)

二 兵隊さんの歌(作詞、真下飛泉・作曲、三善和気)

• ここはお国の何百里 離れて遠きへその下
暗い闇夜に囲まれて かすかに見えるは
割れ饅頭

• ここはお国の何百里 離れて遠きへその下
暗い闇夜に囲まれて かすかに見えるは
槍ヶ岳

なんだこりゃ?? 自分も意味不明だけれど覚えている不思議な歌ばかりなのでした。他、替え歌は多数ありますが、エッチなものや母ちゃんの個性があふれすぎているもの等、本書に掲載できるような歌ではないため、心の内に秘めておきます。皆さまにはここまでで感じ取っていただければ幸いです。

こんな感じで毎晩、小学生の私に聞かせていい歌なのでしょうか。

「北海道弁・なーんもだ、どうせ意味不明なんだから、いいしょっ」

だめですよねー、きっと、その歌を聞かせていたのは私だけにとどまらず、でめんさんと畑仕事をしながら大きな声で歌い、皆さんで大笑いし楽しんでいたのではないかと、想像することができるのです。その様子が、目に浮かぶなー! だってそんな母ちゃんの子だもん、分かるのです。

ちょっと母ちゃんの自慢話、実は母ちゃん頭が良かったらしく、なんでも「○○女学校を右総代で卒業した」、というのが口癖でした。

その証拠に、母ちゃんが亡くなった一九九九(平成一一)年四月(八二歳)の告別式では、同級生が大勢駆け付けてくれたのです(富良野では朝刊に掲載されるため)。