俳句・短歌 四季 2021.02.25 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第10回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 中国で暮らしていての極め味 昨日饅頭今日餃子食べ 花が散り緑盛り合う地帯見る 強い印象生きる新鮮 春の宵小枝の靡(なび)く向きを見て 日本の方より来る風を知る
小説 『春のピエタ』 【第7回】 村田 歩 刑務所で、お袋と13年ぶりに対面…こんなに小さな女だったか―。あの頃、生活が苦しく、いつも歯を食いしばっていたお袋は… 俺たちは婆さんより早く呼ばれた。刑務官に案内されているとき、初めて親父が落ち着かない様子を見せた。首から下は先を行く刑務官に素直に従っているのに、首から上はまるで道を見失ったかのようにあたりをきょろきょろ見回している。勝手が違う、といった顔だ。俺は急に不安になった。悪い想像が浮かぶ。たとえばお袋は急病で、敷地内の医務室のベッドで身動きできなくなっているのではないか。だからいつもの面会室で会うこと…
小説 『愛は楔に打たれ[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 青石 蓮南 「今日で最後にしましょ」不倫相手と別れた十か月後、二人目の子供が生まれた…。W不倫の夫婦の秘密にまみれた家族関係とは 秒針が動く音が聞こえてくる。カチ、カチと、心臓の鼓動に合わせて。橙色のルームライトが、薄暗いベッドルームにぼんやりとあかりを灯し、モルタルで施された白壁には、二人の影が写し出されている。「どう? 結婚生活は」「楽しいわよ」「子どもは一歳だっけ」「ええ」男の腕枕の上で、有花は目を閉じた。「省吾君だったよね。名前」淡いシャンプーのほのかな香りが、有花の黒髪から漂ってくる。「俺は子どもも出来ずに離婚だ…