俳句・短歌 四季 2021.02.25 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第10回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 中国で暮らしていての極め味 昨日饅頭今日餃子食べ 花が散り緑盛り合う地帯見る 強い印象生きる新鮮 春の宵小枝の靡(なび)く向きを見て 日本の方より来る風を知る
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『薄紅色のいのちを抱いて』 【第19回】 野元 正 工事で〝命の恩人〟の「菩提樹」が伐られる危機――古い記憶を辿っていくと、幼いころに撮った写真に写る菩提樹にはしめ縄が… 【前回の記事を読む】「命の恩人」の菩提樹の下で、高校から24歳まで付き合った元彼とデートの別れ際に別れを惜しんでよく話し込んでいた…「それでどうなったん?」「ああ、それと近所のおかみさんたちに頼んで、この樹を伐ると、祟りがあります、かつてこの大樹を、邪魔や、と伐ろうとした人がもう五人も死んどる、って噂を流したんやて。効果覿面 (てきめん)や。欅の大樹は残った」と祐司は笑いながらさらに続ける。「ほ…