俳句・短歌 四季 2021.02.18 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第9回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 青柴に黄色の野花美しく 可憐に咲いて涙一粒 暖かな春の日和に親と子に 眼差しが行く猫の戯れ 吹く風の清々しさと爽やかさ 初夏香り出す江南の春
小説 『春のピエタ』 【第7回】 村田 歩 刑務所で、お袋と13年ぶりに対面…こんなに小さな女だったか―。あの頃、生活が苦しく、いつも歯を食いしばっていたお袋は… 俺たちは婆さんより早く呼ばれた。刑務官に案内されているとき、初めて親父が落ち着かない様子を見せた。首から下は先を行く刑務官に素直に従っているのに、首から上はまるで道を見失ったかのようにあたりをきょろきょろ見回している。勝手が違う、といった顔だ。俺は急に不安になった。悪い想像が浮かぶ。たとえばお袋は急病で、敷地内の医務室のベッドで身動きできなくなっているのではないか。だからいつもの面会室で会うこと…
小説 『おーい、村長さん』 【第14回】 浅野 トシユキ 「どんなにイヤなことがあっても我慢するんだよ。もし、悲しくなったり辛くなったら…」15歳、実家を離れて就職する私に母は… 出発する前日の夜、「どんなにイヤなことがあっても我慢するんだよ。もし、悲しくなったり辛くなったら、夜空を見上げて、お月様にお祈りしなさいね。お母さんだと思って。そうすれば、絶対乗り越えられるから。すぐ叶わないかもしれないけれど、きっと叶うから大丈夫。お母さんも奈津のことを祈ってるからね」お母さんは遠く離れて暮らす私のことを心配してくれていた。秋田から一緒に来た同級生たちは大半が上野で電車を降りて…