俳句・短歌 短歌 故郷 2021.02.19 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第41回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 友よりの色紙届くのメール有り 嬉しさ受けて涙零(こぼ)れる 夢心地思い思われ恋い慕う 相思相愛恋に焦がるる 早春に母なる友を想起する 娘乙女の十五歳哉
エッセイ 『迷子 うつと離婚と私』 【第11回】 野沢 りん 救急車で運ばれた夫。間違えて開けた携帯には…「会いたい、愛している」 遠くからお見舞いの人は少ない。お見舞いの人がくると羨ましい。患者は嬉しいのか恥ずかしいのか誇らしいのか赤くなる。ホールの隅のテーブルで手提げ袋を受け取る。私たちは遠くから見るともなく見る。でも気になる。そのうち、一人偵察に行く。「どうやらお菓子のようだ」と報告。洗濯物の時は速やかに解散する。お菓子を頂いてもお見舞いの方が帰ると看護師さんに預けることになっていました。どうしたことか、家族のお見舞い…
小説 『標本室の男』 【第20回】 均埜 権兵衛 トラックの運転手から「俺の所へ来ないか?」とありがたいお誘い。だが、上手くことばが見つからず、やっと口に出たのは… 男は静かにそう言った。骸骨は吃驚した。「あっ、いや、情けをかけるとかそんなことじゃねぇぞ、俺なぁ助手を欲しいと思っていたところなんだ」男はまた照れたように笑った。「俺なぁ、大町に住んでいるんだ。長野県の大町だ、分かるか? 部屋は空いているし、お前がそのつもりなら大歓迎だ」骸骨は目を瞠った。まさかこんなことで仕事が見つかるとは思ってもいなかった。大町とはどんな所か知らなかったが、むしろ行ってみたい…