京都散文ウォーキング 二〇一七年五月:道真公の実力

参道を歩きながら、高校生らしき息子に日本史の出題をしている母親がいる。

「菅原道真を讒言(ざんげん)して大宰府に左遷させた人は?」

北野天満宮にちなんだよい問題だ。さすがです、お母さん。それに引き換え無言の息子。

「藤原時平」と心の中で素早く解答を言う僕。勝った。

「菅原道真の左遷時、延喜の治と言われる天皇親政を行った天皇は?」

遠くを見つめる息子。試合放棄か。余裕で「醍醐天皇」と心の中で叫ぶ僕。二ポイント先取だ。お母さん次の問題をお願いします。

「菅原道真が大宰府で都を偲んで詠んだ歌は?」

とうとう、無視するようにスマホをいじり出す息子。お前という奴は……。

「東風吹かば 匂いおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」

思わず、口に出してしまったじゃないか。これも何かの縁、「お母さん、この子の大学進学はあきらめてください。道真公でも無理です」と無言の視線を母親に送ろう。

牛は天満宮では神の使いとされるだけに、昨夏、ここは黒毛和牛の放牧場か、と思うくらい境内の至るところに奉納された牛の像があったのだが、なくなっている。食肉工場に送られた訳ではないが、行方が気になる。牛の数が一定量に達すると処分されるのだろうか。牛はいずこへ。

御礼の参拝も無事に終えて、宝物殿で天満宮が所蔵する刀剣の特別公開を見た。源氏重代の家宝「髭切」が展示されているではないか。