「この話とは?」

「言いにくいがこれから話しますよ。大変な権力者にはなったのだが、彼をもってしてもどうにもならないものもあったんだ。会長は私に言った。

『全ての権力を手中に収め、みな私のことを羨ましいと言うがね、私から見れば他人では普通のことなのに私に与えられないものもある。コジモ、お前だから話すが私も三十六歳だ。キャサリンと結婚してはや十年になる。しかし悲しいかな、一人の子供も授からないんだ。実は最近、家内が子供の産めない身体だと分かった。ゼロではないとは言われているものの、気休めの言葉にすぎないさ。子供がな、子供さえ授かればという切実な気持ちなんだ』

『お前でも満たされないことがあるのだな。では、養子でももらったらどうかね?』

『いや、それも考えた。が、キャサリンも私も同じ意見でね。自分たちの子供が欲しいのだ。いや、つまり、たとえもらい子であっても、産みの親のはっきりした養子では将来が不安だ。ルーツが決して表に出ることのないような、一切の縁を絶ち切れるような子供。それに……俺はぜひとも女の子が欲しい。そうさな、将来の美しさを約束されるような美しい娘だ』