俳句・短歌 四季 2021.02.04 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第7回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 夏咲きの木立に新葉(しんば)萌え出てる 窓辺を飾る準備見る哉 陽春に寒気が入り霧懸かり 宵に金星仄(ほの)かに光る 躑躅(つつじ)咲く木の傍らをひらひらと 紋白蝶の舞飛ぶを見る
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『薄紅色のいのちを抱いて』 【第18回】 野元 正 「命の恩人」の菩提樹の下で、高校から24歳まで付き合った元彼とデートの別れ際に別れを惜しんでよく話し込んでいた… 【前回の記事を読む】衝動的に丸椅子を持ち出して枝に寝間着の腰紐をかけ丸椅子を蹴ると「馬鹿なことするんじゃないわ。生きるんよ」と未知の声が…チラシを見て沙那美はおもった。(心に深く秘めた〝命の恩人〟。そのことを決して忘れないと誓った、あの菩提樹はどうなるのだろう)と。来週にどうしても生徒に返さなければならないテストの答案が溜まっていたので、担当授業が終わると、家で採点をしようと、教頭に自宅研修と断…