俳句・短歌 四季 2021.01.28 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第6回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 夕霞 恋慕に萌えて噎(むせ)び泣き 遥か遠くに恵山望む 薄紅の躑躅(つつじ)の花も咲き出して 命の力吹き出すを見る 温やかな水辺静かに緑生え 枯れ葦の葉も緑始まる
小説 『再愛なる聖槍[ミステリーの日ピックアップ]』 【新連載】 由野 寿和 クリスマスイヴ、5年前に別れた妻子と遊園地。娘にプレゼントを用意したが、冷め切った元妻から業務連絡のような電話が来て… かつてイエス・キリストは反逆者とされ、ゴルゴダの丘で磔はりつけにされた。その話には続きがある。公開処刑の直後、一人の処刑人が十字架にかけられた男が死んだか確かめるため、自らの持っていた槍で罪人の脇腹を刺した。その際イエス・キリストの血液が目に入り、処刑人の視力は回復したのだという。その槍は『聖(せい)槍(そう)』と呼ばれ、神の血に触れた聖(せい)遺物(いぶつ)として大きく讃えられた。奇跡の逸話(…
小説 『小窓の王』 【第3回】 原 岳 あの冬、剱岳での遭難事故から…もう初夏だ。あの人の写真をなぞる。「早く、迎えに行きますから。必ず、探し出しますから」 しかしもう部屋を出なければならない時間で考え込んでいるわけにもいかないので、まあ、それ以外の意図はないのだろうと半ば無理やり思い聞かせ、便箋を茶封書にしまう。ビジネスバッグに入れようかと取り上げるが、間違って長倉の両親の目につくようなことがあってはいけないと思い直し、しまわずに机上に置く。立ち上がり、用意しておいた菓子折りの手提げを手に取る。これも心配になって中身を確認すると、菓子折りはきちんと…