俳句・短歌 短歌 2021.01.31 歌集「祈り」より三首 歌集 祈り 【第15回】 佐藤 彰子 ―ああだから月はみんなに愛されるんだ自分ひとりを見てる気がする― 夜明けに人知れずそっと咲く花のように、 それでいいんだよ、と許してくれるような、 自分のかわりに、幸せを願ってくれるような。 心に灯りをともす、優しくあたたかな短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 知らん振りしてる乗客さっきから霊峰富士が窓を覗くに ほろ酔いで行く境内にほろ酔いの顔した羅漢の一群に会う 愛したる女を想うこともあろう羅漢となりて久しき今も
エッセイ 『59才 失くした物と得た物』 【新連載】 有村 月 結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…
小説 『雪女』 【第2回】 佳 英児 早朝のゴルフ練習場。男性が使うアイアンを扱う謎の美女。相当に上手いようだが… 私は、女性を見た。彼女もこちらを見た。微笑んだその人は知的な雰囲気で整った顔立ちだった。少し開いた口からは、歯が見えた。明眸皓歯 (めいぼうこうし)の形容がぴったりの人だ。まだ、話してもいないけれど、きっと気の利いた人であろうと思った。「グッドショット」と言う代わりに、私は親指を立ててサインを送った。彼女は、チョコンとうなずくように挨拶を返してくれた。一体この女性のゴルフの腕前は如何ほどだろうか…