朝六時院内放送の声清し「今日は十月一日です」と

声すこし戻りてきたる人が今朝「誕生日なの」と我に告げたり

妹の摘み来し小さな野の花が退院日まで咲きつづけたり
※本記事は、2015年3月刊行の書籍『歌集 祈り』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。
歌集 祈り【最終回】
―ああだから月はみんなに愛されるんだ自分ひとりを見てる気がする―
夜明けに人知れずそっと咲く花のように、
それでいいんだよ、と許してくれるような、
自分のかわりに、幸せを願ってくれるような。
心に灯りをともす、優しくあたたかな短歌を連載にてお届けします。
朝六時院内放送の声清し「今日は十月一日です」と
声すこし戻りてきたる人が今朝「誕生日なの」と我に告げたり
妹の摘み来し小さな野の花が退院日まで咲きつづけたり