ユキチのめがね
つぎの日の、朝のことです。
「おはよう」
ヤマトは一番に、ヒロユキのところに行きました。
「……」
ヒロユキは、つくえの上を見つめて、うつむいたままです。
「あのさ、これ、あげる」
ヤマトは、ランドセルの中から、黒ぶちのめがねをとり出して、つくえにおきました。とてもぶあついレンズの、めがねです。
「ぼくのおじいちゃんの、古いやつ」
きのうヤマトが、さんざんみがいたせいで、めがねはピカピカ光っていました。
「えっ、ぼくに…?」
ヒロユキは、おそるおそるめがねをかけて、きょうしつのあっちこっちを、見まわしはじめました。それから目のまえのヤマトを、見つめてきました。
ヤマトも、ヒロユキをじっくり見かえしました。いくら目が合っても、ぶあついレンズのむこうのヒロユキの目は、少しもきみがわるくありません。
「これ、よく見えない…」
ヒロユキが、なんだかうれしそうに言いました。
「だろ? だから、ちょうどいいはずさ」
ふたりは、どうじにクスッとわらいました。するとそこに、レオがやってきました。