俳句・短歌 四季 2021.01.07 歌集「漣の夢」より3首【第3回】 歌集 漣の夢 【第3回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 室外の木立を埋めて薄紅の 桜の様な花が満開 見上げると金星一つ存在の 驚き伝え凛と輝く 朝の陽の薄雲透す光源に 超越された天見る思い
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『縁 或る武家のものがたり』 【新連載】 伊藤 真康 浪人となった伊藤家は一家離散の憂き目に遭い、父と息子はただ二人、行く当てもなく… この物語は、陸奥(みちのく)の片田舎から現れた、全く無名の武家が記した、戦国から明治までの八世代・二百八十年の軌跡である。この武家が太閤・豊臣秀吉の治世時、奥州の雄・伊達家に仕官するところから、物語は始まる。或る時は歴史の荒波に激しくもまれ、また或る時は歴史を変える大事件に関わりながら、家の栄華を極め、やがて厳しい現実に苦悩し、武家の時代が黄昏時を迎えるとともに、彼らは露と消えていった。歴史は勝…