俳句・短歌 四季 2020.12.25 歌集「漣の夢」より3首【第2回】 歌集 漣の夢 【第2回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 【二〇一二年】 太陽が燃えつつ沈み東空 月が出て来る天体のショー 冬の間の寂しく生えた松の木に 花々囲み緑葉華やぐ 春の宵朧に霞み輝いて 満月の花闇に咲いてる
小説 『春のピエタ』 【第7回】 村田 歩 刑務所で、お袋と13年ぶりに対面…こんなに小さな女だったか―。あの頃、生活が苦しく、いつも歯を食いしばっていたお袋は… 俺たちは婆さんより早く呼ばれた。刑務官に案内されているとき、初めて親父が落ち着かない様子を見せた。首から下は先を行く刑務官に素直に従っているのに、首から上はまるで道を見失ったかのようにあたりをきょろきょろ見回している。勝手が違う、といった顔だ。俺は急に不安になった。悪い想像が浮かぶ。たとえばお袋は急病で、敷地内の医務室のベッドで身動きできなくなっているのではないか。だからいつもの面会室で会うこと…
小説 『浜椿の咲く町[人気連載ピックアップ]』 【第37回】 行久 彬 「自分はこうして歳を取り朽ちて行くのか…」――変化の無い毎日のなか一本の電話があり… 故郷を追われて大阪に来た。出て来た当初は生活を安定させることだけを考え、洒落た服を身に着けることも小粋なレストランで食事をすることも我慢した。尤も、それを許すだけの生活のゆとりもなかったが、職場とアパートの単調な往復を繰り返すだけだった。そしてあと二月ほどで二年近くが経とうとしていた。今日もスーパーマーケットを定時に引けた。黄色くなった御堂筋の銀杏を見ながら帰りのバスに揺られる。アパートに着くと…