訪問看護やめたい

「もうやめたいです」。

そんな声が聞こえてきました。「はて? 訪問看護をやりたいと志願して配置されたのに。何があったのだろう」。
やめたいと漏らしたのは中堅の女性看護師です。

きっかけは84歳のFさんの訪問看護の担当になってからのようです。Fさんは基礎疾患に糖尿病があり、脳梗塞を繰り返し12年間寝たきり状態になっています。

それでもご家族の介護により訪問リハビリ、訪問診療をご利用されながら在宅生活を続けてきました。しかし最近は肺炎になることが多くなり、とうとう経口摂取ができなくなりました。

そんな状態でも、ご家族の「話しかけには返事をするから何とか生かして欲しい」とのご希望もあり、中心静脈栄養を選択されたのでした。

これまでも在宅医療を続けてきましたが訪問診療と訪問リハビリですから毎日ではありません。それに夜間に呼び出されることはありません。Fさんのお宅は木曽の中でも一番の山奥です。当院から片道40分もかかります。

冬季には国道が雨であってもFさんのお宅周辺は雪が積もっています。おまけに道は狭く車ですれ違うのも大変です。日中でもサルの群れにしばしば出会います。

ベテランの専従運転手でも訪問診療後、国道まで戻ると「ホッ」と安堵のため息を漏らすほどです。そんな山奥ですがこれまではリハビリ時を除きチームでの訪問でしたからあまり問題はありませんでした。

しかし中心静脈栄養になってから状況が変わりました。毎日点滴を交換しなければなりません。