無論、Fさんはずっと在宅だけでなく施設も利用されます。ただ在宅時は毎日訪問しないといけません。またトラブルがある時は夜間でも呼び出しに応じ訪問しなければなりません。当院の訪問看護は365日24時間休みなしです。
「怖い。事故が起きてしまいそう」。
それがやめたくなった原因のようです。
夜間に通る車はなくサル、タヌキ、シカ、クマなど野生動物が跋扈する細い山道。何かトラブルがあっても助けを求めることもできません。まして女性で一人です。それを考えればいくら医療のためであっても「行きなさい」とは言えません。
病院医療から在宅医療へ。国の施策方向は変わっています。住み慣れた家で過ごし人生の終焉を迎える。誰しも望むことでしょう。「できるだけ家で看てあげたい」。核家族化が進行した地域では望んでもなかなか叶えられない形です。Fさんのご家族のご希望を何とか支えてあげたいと思うのですが、問題は沢山あるようです。
都会なら患者さんのお宅に近い医療機関と連携し支えることも可能です。でも医療過疎の地域ではそのような連携もできません。在宅と施設利用をうまく組み合わせたサービス利用、夜間の訪問は複数で行う、1人が専従でずっと担当するのではなくセンターのスタッフ全員が交代で担当し、それぞれが週に1回くらいの訪問で済むようにする。
対応マニュアルを作成し夜間にトラブルが生じた場合そのマニュアルに従ってご家族に対応して頂き、深夜の訪問を少なくする、などの工夫が必要です。でもこうした対応では当然費用もかさむことになり訪問看護センターの運営にも影響が出てきます。
いずれにせよ都会と過疎地域では医療事情、生活事情も異なります。医療施策は画一的ではなく、地域に応じたきめ細かな配慮が必要でしょう。
スタッフの意欲をそがないためにも。