第2章 社会

大丈夫かな?

整理していたら古い資料が出てきました。平成21年に全国国民健康保険診療施設協議会(国診協)の機関誌である『地域医療』に書いた地域包括ケアに関する論文です。

高齢社会の中で何故地域包括ケアが必要なのか、体制づくりをどのように行うか、体制づくりを行う上での問題点は何かに触れています。国の施策の中で地域包括ケアが取り上げられてからあちこちでこの言葉が目に付くようになりました。

中にはにわか専門家まで出てきました。でも世の中の動きを見ていますと「本当に地域包括ケアがわかっているのかな?」と思ってしまいます。

私達国診協が進めてきた地域包括医療・ケアは保健、医療、介護(福祉)が一体となったものです。単に医療と介護(福祉)の連携だけではなく医療を受ける前の健康づくりも含まれています。そして保健、介護の間に医療が入っていることです。

言い換えれば地域包括医療・ケアの一番の中心は医療です。医療関係者が単に医療を行うだけなく医療以前の健康づくりにも保健担当者と一体となって動く、また狭い範囲の医療が終わった後にもケア担当者と一緒に当該患者さんの地域での生活を支えていく。それが地域包括ケアであり医療がなければ地域包括ケアは成り立たないのです。

それなのに昨今は都会集中、統合化の中で地域の医療が見捨てられようとしています。地域から医師がいなくなっているのです。医師がいなければ国が進める在宅医療も絵に描いた餠であり地域包括ケアが成り立たないのは明らかです。

また地域包括ケアの中で大切なことは顔が見える関係づくりです。行政担当者、とりわけ首長さんと医療担当者が車の両輪のごとく進むことが大切です。

しかし広域化した地域ではそのような関係を作ることは困難です。そのため顔の見える関係が構築されやすいように市の中を幾つかに分けそれぞれに拠点を置き地域包括ケアを進めるべきと論文に書きました。