第2章 社会
地域医療の危機
91歳のOさんが旅立たれました。認知症もあるOさんはそれまで同じ敷地内ではあるもののご家族とは離れ、独居生活を送っておりました。そんなOさんが進行胃がんに罹患されました。2年2か月前のことです。
切除できない状態ではなかったのですが、ご家族は積極的な治療を望まれず、そのままの生活を続けられました。幸いなことにOさんは痛みもなく、腹部症状もまったくありませんでした。さすがに独居生活の維持は難しくなり、毎回の受診にはいつも息子さんが付き添って来院されていました。
嘔吐が続き食事が摂れなくなり、Oさんが入院されたのはわずか2週間前のことでした。貧血も高度でしたが輸血は行わず、息子さんの介護負担軽減のための入院になりました。入院当初は食べられなかったOさんでしたが1週間目からまた食べられるようになり、会話も可能となりました、でも再度嘔吐が出現し、その2日目に旅立たれたのでした。
Oさんの胃がんがどうなっていたか検査を行っていないためわかりません。でも進行胃がんであっても、苦痛もなく、2年以上入院することなく、自宅で過ごされた末の旅立ちです。91歳の年齢を考えればこのような選択もあっていいと思います。
93歳のHさんの場合も同様です。Hさんが脳出血を発症した時から20年以上のお付き合いです。93歳であっても自力で歩け、認知症もなく、難聴はあるものの会話もしっかりされています。
そんなHさんに半年前に膵がんが見つかりました。でも痛みもないためご家族と相談の上、そのまま在宅生活を過ごして頂くことにしました。