がんの進行により、半年後に閉塞性黄疸が出現しました。しかし内科的な減黄処置で軽快し、また在宅生活が可能となりました。Hさんがいつまでがんと共存できるかはわかりません。
でもHさんの年齢を考えれば手術、あるいは化学療法など苦痛を伴う治療を行い、数年? の延命を図るより、苦痛なく家で過ごされた方がいいように思います。このお二人の他にもがんと共存されている方が化石医師の外来には何人もいます。
そんな方々と触れ合っていますとがんと闘うことだけが医療ではないと思います。ただそうした方々を支えるためには地域の充実した医療機関の存在が必要です。普段診ていても悪くなったら「よそへ行ってくれ」では地域の方々は安心して生活できません。
「困った時はいつでも来て下さい」と言われてこそ地域の皆さんも安心して生活できるのです。医療の集約化の中で地域の医療機関の統廃合が推進されています。無駄を省くため高度医療を拠点化することには異論はありません。
でも高度な医療を必要とする患者さんばかりではないのです。むしろそうではない患者さんの方が多い。でも集約化の結果、地域の医療はすたれ、医師がいなくなってしまいました。
坂下病院は国民健康保険の直営の病院です。医療を受けたくても受けられない方々のために設立された医療機関です。坂下病院をはじめ国保の医療機関は離島、僻地など経営が難しく、民間の医療機関の入って来ない地域に設けられています。
国保の存在があったからこそ地域医療は守られてきました。効率化、医療費削減のために、国保の理念が忘れられようとしています。「困った時にいつも引き受けてくれる」、そんな医療機関の大切さを今一度振り返って欲しいものです。