ダージリン紅茶
「よしっ」
ひまりは少しだけ大きな声を出して、自分に気合を入れるとブザーを押した。だが、すぐに返事は無かった。
もう一度ブザーを押す勇気は、今のひまりに持ち合わせてはいない。あと三十秒だけここで待ってみよう、そして、帰ろう。
庭の花たちを眺められるだけで幸せになるだろう、と、思った瞬間インターホンから、
「は~い、どちら様ですか?」
確かにアッキーママの声がした。
「ひ、ひまりです。ひまりで~す」
あまりの嬉しさに声が上ずりひまりは興奮状態である。ほどなくアッキーママが出迎えてくれた。
ひまりはまるで小学生のようにアッキーママに抱きついてしまった。すると、アッキーママも細い腕だがしっかりとハグしてくれた。ひとしきり、ふたりは玄関でわぁわぁと歓声を上げていたが、
「どうぞ、どうぞ、良かったら上がって。だいぶ散らかっているけどお茶を飲みましょう」
「いいんですか? 突然来たのにいいんですか? 本当にいいんですか?」
「ひまりちゃんなら大歓迎よ」