秘密

次の日、ひまりは学校に行くのをとても億劫に感じていた。それは、やはり昨日、内緒でアッキーママの家、アッキーの家に行ってしまった事が気がかりであった。

アッキーに怒られるだろうか、不安な気持ちのまま教室のドアを開けた。すると、アッキーはまだ登校しては居なかった。

モヤモヤした気持ちが次第に落ち着いていくひまりであった、が、ひまりは授業が始まるまで、自分の席に座ったまま後ろを振り返る事はしなかったのである。

一時間目の授業が終わり、ひまりはオドオドと後ろを振り返ると、アッキーは同じクラスメイトの浩司とふざけて遊んでいた。アッキーの隣には、キーコと言う女の子も座っていて三人がとても楽しそうにしている。

キーコはひまりとは大違いで、明るくて勉強も運動も出来そうな第一印象であった。キーコみたいになれたならとひまりは素朴に思っていた。そのキーコとひまりが大接近するとは、まだ、誰も知らなかったのだ。まさか、ひまりやアッキー、浩司たちがキーコの家にお泊まりする事になるとは、未来は本当に予測不可能なものである。

それはそうと、アッキーはひまりが黙ってアッキーの家に遊びに行って怒っているのだろうか、何も言ってこないのはどうしてだろう、ひまりは一時間目の授業ではノートをとる事さえ出来ずにいた。そして、アッキーと会話するチャンスがないまま午前中が過ぎていったのだった。

昼休み、アッキーの方から話しかけてきた。アッキーママのことは会話に出ない。遠慮がちにひまりはアッキーに昨日の事を切り出した。

「あのさ、昨日は黙って遊びに行ってごめんね」
「ん、なになに。どうしたの?」
「えっ、アッキーママから聞いてない?」
「何も聞いてないよ。どうしたんだ?」
「昨日、学校が終わってからアッキーの家に行ったの。アッキーママにとても会いたくなって行っちゃった。ごめんなさい」
「そうだったんだ。俺に言ってくれれば良かったのに」
「うん。でも、アッキーママと二人で会いたかったんだ。アッキーママが美味しいダージリン紅茶を淹れてくれたの。素敵なスイトピーのティーカップにね」
「あ~、アッキーママのダージリン紅茶は本当にうまいよな」