2013年
2013年12月1日 プリン体雑感
今年も最後の月、師走になりました。我々医師も「師」のひとつですが、医師が走るような事態が起こらないことを念じております。
東京では、晩秋から初冬にかけて銀杏がきれいに色づきます。「紅葉」よりも「黄葉」と呼びたくなるぐらい、澄んだ空の青と銀杏の葉の黄色とのコントラストには目を見張ります。
私の通勤途中にある小学校の校庭に立派な銀杏の木があり、毎年、この時期に見事に黄色くなります。校舎と渡り廊下に囲まれた四角い空間の真ん中にその銀杏がすっくと立っている光景は、まるで一幅の絵葉書を見るようで、朝の清々しい冷気と共に目が覚める思いをします。
12月は忘年会のシーズンで、何かと飲み食いの機会が多くなります。痛風患者さんにとっては、普段にも増して注意が必要な季節と言ってよいでしょう。そんな中で「プリン体」という言葉を最近耳にすることが多くなりました。今月は、このプリン体について解説します。
プリン体は、痛風の原因物質である尿酸や、核酸の成分であるアデニン、グアニン、エネルギー源であるATP、旨み成分のひとつであるイノシン酸などの総称です。
このプリン体はすべての生物にとって必要不可欠な物質ですが、体内で不要になると分解されて尿酸になり、尿の中に捨てられます。したがって、プリン体をたくさん摂取したり、何らかの原因で腎臓からの尿酸の排泄が悪くなったりすると、体内に尿酸が蓄積され、それが一定の限度を超えると関節にひどい炎症を起こします。これが痛風です。
確かにプリン体を多く含む食品を多く食べすぎると、尿酸が体にたまりやすくなり、尿酸値が上昇します。ビールはプリン体の含有量が多いアルコール飲料ですから、痛風患者さんはビールを避けるように言われます。
プリン体ゼロを謳い文句にするビールが発売される所以です。逆に焼酎はプリン体の含有量が少ないので、痛風患者さんは気を許してよく飲んでしまいます。しかし、残念なことにアルコール自体が尿酸値を上げる要因ですので、焼酎を飲んでも尿酸値は上昇してしまいます。