俳句・短歌 四季 歌集 2020.11.19 歌集「旅のしらべ・四季を詠う」より三首 歌集 旅のしらべ 四季を詠う 【第32回】 松下 正樹 季節に誘われ土地を巡る尊きいのちを三十一字に込める 最北の地で懸命に生きるウトウ、渚を目指していっせいに駆ける子亀……曇りなき目で見つめたいのちの輝きを綴る短歌集を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 産卵をみとどけしわれら海亀の 後追ひもせず茫然とゐる 砂浜に抱かるる卵 二月を 地熱に温められて孵らむ 砂浜に孵りし子亀夜を待ちて 渚をめざしていっせいに駆ける
小説 『毎度、天国飯店です』 【第6回】 竹村 和貢 サークル勧誘チラシの前で、『徒然草』を抱えた美人と出会った…。 天国飯店の定休日は毎週火曜日。アルバイト生四人で、月曜から土曜の間の五営業日を分担する。四人のうち誰か一人が二営業日に入る。その者以外の三人のうちの一人が日曜日に店に入る。日曜日は大学が休みなので、朝の十時から閉店の午後九時まで十一時間店に入ることになる。「ほな、俺、明日もバイトやさかい、おっちゃんに自分のこと話してみるわ。多分、おっちゃんも構へん言わはる思うねんけど」夏生は、「できない」とは思…
小説 『彼のために人を焼く』 【第14回】 暮山 からす 一様に目撃者が証言する「ツキシマツバサ」この火事は事故なのか事件なのか? 「そうだ、その人叫んでいました」「叫んでいた?」「ええ。ツキシマツバサがどうとか」「ツキシマツバサ?」顔を曇らせた。行沢は聞いた名前をメモに取っている。「その名前に心当たりはありますか」「いいえ。知りません」それから通報者に何点か話を聞いたが、特段おかしな様子はなかった。他の住民も同じような証言だった。矛盾点や食い違いは見られない。みな一様にツキシマツバサという名前を聞いているが、その存在は知ら…