エリカは、なんとか馬車を手配すると、マリア・アンナの家に向かう。

途中で道路にマリア・アンナが倒れているのが見えた。馬車が停まると、エリカとマイがマリア・アンナに駆けよる。

「マリア・アンナ!」

マリア・アンナ、エリカにしがみつきながら、

「怖いーー!」

「マリア・アンナ!」

「怖いわ。あの男は私のほおにふれ、優しくキスをしたわ。その手で私の首をしめ、エッグはどこだと詰め寄ったわ。怖かったわ。エッグを彼の顔にぶつけると男は馬車から私を追い出して、行ってしまったわ」

マリア・アンナ、涙を流しながら、

「怖いー! 怖ーい!」

「しっかりして下さいマリア・アンナ。恐怖は過ぎ去りました。落ち着いて下さい」

マリア・アンナ、エリカに抱きついてさめざめと泣く。

マイはその姿を呆然と見つめていた。次の日、エリカとマイはプリマ・ドンナの家を訪れる。プリマ・ドンナの首には痛々しいしめられたあとが――、

「私、故郷に帰るわ。あんな怖い思いをしてパリにはいられない。国で細々と歌っていくわ。強がっていても私も女。あのような恐怖を前にして平静ではいられない」

「さようなら、エリカ」

「さようなら、プリマ・ドンナ。お身体を大切に」

マリア・アンナの家を出る時、エリカの目に涙が――。

「くやしいわ。マリア・アンナを助けることができなかった。核心にたどりついてたのに……」

次回更新は11月13日(金)、20時の予定です。

 

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