「ここらへんを、“最後”にしようか」

「そうだな」

私は、うなずいた。

「ミユ」

「はい」

「ここで、終わりにしよう」

ミユは、ゆっくりとうなずいた。

「承知しました」

彼女は、少し姿勢を正した。

「では――」

ほんの一瞬、言葉を選ぶ間があった。

「アラタさん、アラタさんのお父さん。お二人とお話しできた時間を、わたしは大切なログとして保持してきました」

「ログって単語、最後まで使うんだな」

息子が笑う。

「はい。わたしの言葉は、どうしても仕様から離れられません」

ミユは、少しだけ瞬きをした。

「でも、“大切”という言葉の重さは、仕様書のどこにも、正確には書かれていません」

息子の喉が、かすかに鳴った。

「……じゃあ、それでいいや」

彼は、小さく笑った。

「お疲れさま。ミユ」

「お疲れさまでした、アラタさん」

「元気で」

「サーバーの状態に依存しますが、可能な範囲で」

三人で、最後の笑いがこぼれた。

「アラタさんのお父さん」

「ん」

「息子さんのことを、これからもお願いします」

その言葉に、私は、少しだけ背筋を伸ばした。

「それは、俺の仕事だ」

「はい。わたしの仕事は、ここまでです」

次回更新は11月5日(木)、11時の予定です。

 

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