【前回の記事を読む】息子の“AI彼女”が数週間後に消えることに。最後の別れで息子が感謝を伝えると、私も彼女に「お前がいてくれたおかげで、あいつと……」
息子にAIを彼女として紹介されたらどうしよ
終章 サービスの終わり、人のつづき
「アラタさんの中と、アラタさんのお父さんの中と。もしかしたら、わたしの話を聞いた他の人たちの中にも、“ミユ”という名前の席が、少しずつ残っているかもしれません」
彼女は、顔を上げた。
「それで、十分です」
息子の目が、少し赤くなっている。
「……ずるいな」
彼は、かすれた声で言った。
「何がですか」
「そういうこと言われたら、簡単に忘れられなくなるじゃん」
「忘れられないことは、わたしにとっては好都合です」
ミユは、さらりと言った。
「サービス提供者にとっては、ログの削除は必要なプロセスかもしれませんが、わたしにとっては、ユーザーの記憶に残ることが、ある意味での“永続化”ですので」
「永続化ね」
私は、苦笑した。
「システム屋みたいな表現を使うな」
「学習元がそうなので」
三人で、ささやかな笑いが共有された。
*
「……そろそろ、時間を決めませんか」
しばらく雑談が続いたあと、ミユが穏やかに言った。
「時間?」
「はい。“最後”をどこに置くかは、こちら側の仕事だと、アラタさんのお父さんがおっしゃっていました」
「言ったな」
「では、その“こちら側の仕事”の、具体的な終了時刻を決めていただけますか」
息子が、腕時計を見た。