【前回の記事を読む】子ども時代の父は重い石を背負い、山道を何度も往復した…盗まれないよう名前まで書いたが、休憩中、その石は誰かに持ち去られていて……

第1章

不思議な世界

子供の頃の父は新聞配達なんかもしたそうです。田舎の新聞少年は山道を自転車で走れる所まで行き、配達先の家の近くまで来ると、自転車をほおり出し、山をかけあがって届けたそうです。

その方が早くて近かったそうです。晴れの日ばかりではありませんから、その毎日の繰り返しも大変だったと思います。

林の中を走りぬけ、どんどん進んで行く時に幾度か不思議な体験をしたそうです。目の前を何かが急に横切るのですが、あまりに早くて姿が見えない、突風のようにソレは横切ったり脇をすりぬけていく何か!?

「あれは狐(キツネ)だったかもしれないな、誰かに話すと『あそこの子供はキツネに取り憑かれている』と噂が広まるので黙っていた」と言っていました。

又、ある夜は大井川の向こう岸に幾つもの提灯がポンポンポンと連なり、消えたかと思うと今度は先の方でポンポンポンと灯が見えたそうな。

「あれは狐の嫁入りだったかもしれん」。いずれも正体は不明ですが、子供の頃の絵本を思い出し、興味深く話を聞いていました。

昔の話には、こうした類いのものが結構あったように思います。子供達は大人達の語る話に耳をすまし、じっと聞き入っていたのではと想像します。

 

現代人の目には、そうした不思議なものが見えなくなり、次第に人間の五感が退化していくのでしょうか。

話の初めからバカにして少しも信じる心のない人達が増え、正体不明の妖怪達は「ばかばかしい! 人間のアホ!」とつぶやき自分達の出没しにくくなった世の中をなげいているかもしれません。

日本全国には、いじめられた河童(カッパ)が、助けてくれた寺に御礼の品として大きな瓶(かめ)を持って来てその瓶に耳を近づけると、川のせせらぎの音がする等(など)、民話的な話が沢山あります。

私は、こういう話が大好きで、身をのり出して「それから? それから?」と聞きたいタイプです。