はじめに

七十年前の東京下町の話をひとこま、ひとこま寄せてみました。

どなたかの目に止まり、なつかしんで笑っていただけたら嬉しいです。

そこには、のどかさがあっても物は足りない時代ですから大人も子供も工夫しながら力強く生活していました。

自転車に乗り唄いながら走り行く人、御茶碗を洗いながら子供を叱ったりゴミ捨てに出ては近所の人と、おしゃべりをしたり、夕方になると縁台をまたいで将棋の勝負! 銭湯帰りの人が肩に手ぬぐいを乗せたまま腕組みをして見物する姿。

そんな庶民の織り成す昔話を私の胸に収めたまま、手ぶらでアノ世に行くには、もったいなく本にすれば私という人間が確かに、この世に居た証になるのではと、そして読んで下さった方々に少しでも笑いを御分けできるかもしれません。

有名な小説『鬼平犯科帳』(池波正太郎、文藝春秋、1968年~)で有名な長谷川平蔵は語っています

「人間はいつ死ぬか分からぬ。分かっているのは死ぬということだ。まして明日の事は、もっと分からぬ」

今を悔いなく生きろと言っているのでしょう。

私はこの本を作らなくては最後に悔いが残ると思い、心を決め書くことにしました。